荒井義行の平成意見箱/ソシオ・フリエスタは消えるのか


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 W杯が開催される年のJリーグ開幕を、1カ月後に控えて、「ソシオ・フリエスタ」が消されようとしている。
 「ソシオ・フリエスタ」はフリューゲルスが横浜マリノスに吸収合併されたのをきっかけに、横浜FC創設の原動力となった任意団体である。「企業の論理で消滅しないチームを作ろう」との思いから、チームの運営会社となる「横浜フリエスポーツクラブ(YFSC)」を設立して、99年に横浜FCが誕生した。
 日本で初めての「市民がつくる、市民のクラブ」であった。それは、新しい大きな実験ともいえた。
 横浜FC誕生以降、YFSCと「ソシオ・フリエスタ」はクラブの運営方針をめぐって対立し、ソシオ側が昨年10月、YFSCに対してソシオの運営資金と会員名簿の返還を求める仮処分申請を横浜地裁に起こした。地裁は今年1月11日、訴えを却下した。
 その1週間後、YFSCの代理人から、「ソシオ・フリエスタ」の理事宛に内容証明つきの「通知書」が送付された。「ソシオ・フリエスタとしての活動は、YFSCの保有する商標権の侵害にあたるので、即刻、中止することを求める。活動を中止しない場合は、民事・刑事を含む法的措置に訴える」というものだ。
 両者の関係がこじれにこじれたことの起こりは、昨年1月にさかのぼる。YFSCが、ソシオ理事の選挙期間中に、ソシオ会員に「協約書」を送りつけたのである。「協約書」は、ソシオ会員がYFSCと直接契約を結ぶことを求めていた。「承認しない場合は退会手続きを取るように」という内容だった。ソシオ理事会を骨抜きにする狙いだった。
 理事会とYFSCの協議経過報告では、「ソシオ会費は当初より横浜FCの活動資金として、会員の皆様より拠出されたもののはず。理事会の承認なしに使用できないのでは、責任ある経営をすることは困難と考えた」と当初からの協定書を、新しい「協約書」に切り換えた理由を説明している。これはソシオ創立時の「ソシオ・フリエスタ創立メンバー募集のご案内」の内容とは、明らかに矛盾している。
 「募集案内」の中の「ソシオ」の定義付けは、「メンバーのクラブ会費により支えられている組織」のことで、チーム強化等に関する発言権(チーム運営への参画の権利)を得ることができることになっている。つまり、市民参加のクラブ経営システムである。メンバーは、その組織を自主管理によって運営しながら、代表を選出して経営陣との協議を持ったり、会員相互の交流イベントを開催したりすることができる、と書かれている。この「募集要項」に賛同したから短期間に、多くのソシオ会員が集ったはずだ。