荒井義行の平成意見箱/横浜FCが危ない 原点回帰が必要だ
混乱の背景には増資の決定が…
最大の争点は法人持ち株 よりよい方法論はあるか
マリノスに合併されて"消滅"したフリューゲルスを再建しようと設立された横浜FCが、JFL正会員として優勝。チーム成績としてはJ2昇格の条件をクリアしたが、ソシオ内部で株式割り当てを巡って対立、紛糾している。
10月28日、29日に開かれた「J2昇格へ、横浜FCを支援する会」と「ソシオ・フリエスタ臨時総会」の2つの会に参加したが、「ぜひJ2昇格」の熱い思いは同じだった。方法論に違いがあっても、なぜこれほど深刻に対立しなければならないのか、理解に苦しむところだ。
横浜FCの運営会社であるフリエスポーツクラブ(以下YFSC)が、ソシオの理事会に提出した「株式に関するお願い」に対して、理事会が会社に示した"株式割り当てのガイドライン"は原則として個人株主は設けない、300万円を超える株主は設けない(ソシオ持株会を除く)、ソシオ持株会以外の株主は法人格を持つ法人ソシオ会員を前提とする、地域に密着した企業活動を行い、社会的にも信用できてソシオの精神遵守するもの、原則として株式の売却は認めない、10月8日の合意に従い、現行株主並びに親族、代理人等、及びその者が経営する法人は除く−−であり、「最終的判断はクラブを信頼してお任せする」としている。
理事会からの諮問を受けた持株会設立準備室がまとめ、臨時総会で議決したもう一つの「株式の保有方針」は、ソシオ持株会が33・4パーセント以上50パーセント未満、個人株主33・3パーセント未満、法人株主33・3パーセント未満で、個人株主、法人株主ともにソシオの株主に限られ、個人は1人あたり一律4株20万円、法人は1法人あたり一律10株50万円としている。
持株会設立準備室が、説明会を開くなど時間をかけた"準備室案"が、細部まで規定しているのに比べると"ガイドライン"はかなり大雑把だが、説明資料では「株式総会における特別決議(会社の合併、主な営業項目の譲渡)を許さない3分の1を超える株式の割合を確保することで、ゴールキーパーとしての役割を果たすことができる」と補足している。持株会の保有割合は、"準備室案"は「33・4パーセント以上50パーセント未満」であり、"ガイドライン"は「3分の1を超える」だが、趣旨が同じ「特別決議」阻止にあるとしたら、本来ならとくに対立しなくともいい。
"準備室案"が「個人株主」を認め、"ガイドライン"は「原則とし認めない」点は相違するが、「法人か株主はソシオ会員を前提とする」ならば、ソシオが100 パーセント株式を保有することでも両案は一致している。だが、"ガイドライン"の説明で最後に、「7社に100 万円ずつ持ってもらい、持株会用の3分の1は奥寺GMに預けておけばいいだろう。とにかく早く株主を確定してJ2に昇格しよう」と言ったところに本音があったようだ。
「経営を左右する大株主を設けないことによって、活動の原点ともいえる悪夢を再びおこさせないためです」と"合併阻止"を匂わせた説明資料に対して、「株式の売却は商法でみとめられていること。親子会社、関連企業などで一つの組織に経営を左右される心配はないか」との質問も出ていたが、「ふだんからよくお付き合いをして安定株主になってもらう」などと、訳の分からない答えに終始していた。
"ガイドライン"と"準備室案"の最大の対立点は法人株主への割り当て比率と「1つの組織の経営を左右される危険」への防止策にある。"ガイドライン"では、説明資料で「アイデアを皆さんから募集し、今後話し合っていきたいと考えています」と具体案が示されていないが、"準備室案"では、法人株主が「株式権限の行使や退会時の株式譲渡等に関して持株会と覚書を交わすこと」と規定して、"覚書案"には「持株会の定めるYFSC株式の引受資格を満たさなくなった場合は、速やかに持株会にて定める株式評価算定方式にて算定された価格で持株会に譲渡すること」という"誓約書"の一項目が盛り込まれている。"企業論理"より、フリューゲルスの消滅の中から立ち上がった横浜FCのソシオやサポーターとしては、同じ悲しみを味わわないために、もっとも留意しなければならないことだろう。
クラブ運営の新たな試み 対立を乗り越えて融合を
規約に照らすと、「臨時総会」は告知が1日遅く、監事権限による招集は理事会に不正があったときに限られるから総会は無効であり、その総会で議決された"準備室案"も認められないと、まったく無視することは、理事会が準備室に諮問したのだから無責任といえよう。同じソシオの仲間なのだから、テーブルの上に載せて話し合い、優れている部分をつなぎ合わせればよいのではなかろうか。