荒井義行の平成意見箱/ソシオあっての横浜FCのはず


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混乱の背景には増資の決定が… 


 8日に行われたJFL後期第7節で、横浜FCは国士大に5ー3で勝って今季1分けをはさんで17連勝。4試合を残して2位以内が確定し、来期からのJ2昇格の条件をクリアした。マリノスとフリューゲルスの合併に反対し、チーム存続を求めて6700万円もの基金を寄せた人たちと、ソシオ会員3000人の夢の実現に前進したのだが、一方では経営のあり方に対する意見の対立が表面化している。

 10月5日付けでソシオの会員に、横浜フリエスポーツクラブ代表取締役辻野臣保名で、「重大な事項が発生しました。株主の1人宮崎(亮)氏より株式総会招集要請書が届き、取締役辻野臣保の解任と新取締役4名の増員という要求がありました。なぜJ2入会申請、審査の大事なこの時期に解任要求なのか、まったく理解できず困惑している次第です。この大事な時期だからこそ代表辻野、GM奥寺以下クラブ一同結束を固め、この難局を乗り越えていく所存でおりますので、ソシオの皆様には何卒ご賛同いただき、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」という主旨の文章が送付された。「なおこの文章は下記クラブスタッフの総意であり、宮崎氏の要求に対し反対致します」と辻野代表、村上源也取締役、奥寺GM以下7人のスタッフの連名が添えられ、8日の試合後、会社から説明致しますと付け加えられていた。

 まったく筋違いな"お願い"だ。株主は辻野臣保、鈴木奈津子、宮崎亮の3氏が68株340万円ずつ保有しているのだから、意見の対立は株主総会なり役員会で解決すればいい問題である。ソシオにも諮らなければならない重要な問題なら、ソシオの理事会と協議して、さらにソシオの総会に諮ればいいことだろう。こんな乱暴な方法で物事を解決しようとするのかと驚かされたが、宮崎氏の妥協と奥寺GMの仲介という形で合意書を交わして混乱は避けられた。しかし、「応援する心は一緒。ソシオあっての横浜FCです。これからもよろしくお願いします」と辻野代表は頭を下げたが、説明はまったく不十分だった。

 合意の内容は、(1)宮崎氏が株主総会開催の請求を取り下げる。(2)宮崎亮、鈴木奈津子、辻野臣保は横浜フリエの株式をすべて第三者に譲渡する。その譲渡先及び譲渡時期は奥寺康彦氏に一任することとし、同氏に対してその売買の権限を委任する。(3)宮崎、鈴木、辻野は株式を譲渡するまでの間、株主としての権
限を凍結し、会社運営のため必要最小限の事項を除き、株主としての権限を一切行使しない、というもの。そして、2通の確認書を作成。(1)宮崎、鈴木、辻野から委任された株式の売却については、ソシオ・フリエスタの意向を最大限尊重し、その売却先、時期についてはソシオ・フリエスタに決定してもらう。(2)新株発行手続きにより株主が引き受けなかった株式は、最大限ソシオ・フリエスタの意向を反映させた上で、第三者割り当て先を決定する、と3人の株主と仲裁人である奥寺GMの間で確認書を交わしている。

 なぜ、このような合意書や確認書を交わさなければならなかったのかという背景には、会社の役員会が増資を決定していたということがある。記者会見で辻野代表は「ソシオの理事会には説明していなかった」と言っていたが、あるスタッフは「説明していた」と認めている。理事会の段階で止められていたフシもあるが、なぜこんな重要な問題をソシオ総会に諮らず、強引に押し進めようとしたのか。宮崎氏が株主総会の開催を要求、辻野代表の解任を求めたのは、3000万円の増資の割り当て先が一般企業になるのではないかと懸念されたからだ。そんなことになったら、ソシオ・フリエスタ憲章に基づいた「市民が会員になり、資金面でも運営面でも自分たちのチームとしてサッカークラブを支える制度」ではなくなってしまう。

 そこで、株式増資の凍結は会社の意向を入れて引き下げ、確認書で「ソシオの意向を最大限尊重する」「意向を反映する」と強調している。